美人に生まれたかった訳じゃないのに。


別に不細工に生まれたかった訳でもないけれど、〝綺麗な子〟と呼ばれるよりも〝賢い子〟と呼ばれたかった。

それでも、努力を怠らなければいつかは帰ってきてくれるかもしれないと無駄な幻想を抱いていた私は、馬鹿のひとつ覚えみたいに優等生を演じていた。


勉強も運動も部活動も手を抜かない。不平不満を言わず、皆が嫌がるような仕事も積極的に引き受ける。どんなときも笑って愛嬌を振りまくように。毎日そうやって過ごしていた。


その結果からか、皆からの信頼も厚く、友達も比較的多かった。

少なくとも、私やそう思い込んでいた。

それが単なる独りよがりだと気がついたのは、中学の卒業式のこと。


別れを惜しんで涙を流す同級生が大勢いる中、私の周りには誰も寄ってこなかった。


友達じゃ、なかったんだ。


私が今まで縋りついていたのは所詮、表面だけを取り繕ったうわべだけの関係で、本当は誰一人として私を必要としていなかった。


涙は、とっくの昔に枯れていた。

もう、本当の笑い方も忘れていた。


流石にもう母が家に戻ってくるかもしれないとは思わなくなっていたし、悲しいも辛いも感じなかった。

ただ、だから私は駄目なんだという奇妙な納得感だけは、強く心に根づいた。

じゃあ、もういいや。


今日は雨だから傘を持っていきましょうと言われるよりも簡単に、私は優等生の仮面を外した。

これからは誰も信じないように、目立たないように生きよう。


漠然と、そんな自己防衛が頭を支配した状態が、高校生になったばかりの頃の私の原型だった。

そして、それはまだほんの少しだけ、私の心に住み着いている。