知ってたんだ。私が気分悪くて授業に出なかったこと。

宮野さんから聞いたのかな。心配してたって言ってたもんな。というか、それ知っててあの態度だったのか。まぁ、私のこと嫌いだから当然といえば当然かもね。


「あんたと一緒にいる方が気分悪くなりそうだから」

言ってから軽く後悔した。最近は毒を吐くことも減ってきていたのに、これじゃあ逆戻りだ。渚のおかげで、ちょっとずつ心が優しくなってきていたのに。


「お前さぁ、見た目は結構いいんだからもっと愛想よくしたら?」


呆れたようなため息に、堪忍袋の緒が切れそうになる。

こいつはなにもわからないんだ。この見た目のよさが、私にとってはどれだけの価値か。


なにひとつ一番になれない私が、唯一手に入れたもの。


それを私がどれだけ呪ったか、こいつには一生わからない。


そんなことを言っても鼻で笑われそうだったから、なにも言わずに屋上から出て行った。

宮野さんが伝えておいてくれたからか、大幅に授業に遅れた私を教師が咎めることはなかった。

口パクで「大丈夫?」と心配そうに尋ねる宮野さんに申し訳なくなりながら、自分の席に座って教科書とノートを取り出す。


一人戻ってきた教室の席は、二人分だけ欠けていた。