久遠の果てで、あの約束を。

無邪気で幼くて神聖で、かけがえのない大切な約束。

声も身長も一人称さえも違っていたけれど、本当は、とっくの昔に気がついていた。


あの男の子が、渚だということに。


だって初めて逢ったとき、彼は確かにこう言った。



ーーせっかく綺麗な声をしているんだから、試しになにか歌ってよ。



渚は以前カラオケに行ったとき、私の歌声を褒めてくれた。

あの稚拙な口約束を、ずっと憶えていてくれたのだ。

だけどその約束が叶わないことを、ずっと一緒にいられないことを受け入れたくなくて、ずっと見て見ぬふりをして生きてきた。


でも、もういいよね?

臆病かもしれないけれど、きっと今なら打ち明けられる。

心の奥底に秘め続けた、この想いと告白を。


私にとって貴方は、いちばん星のような人でした。

闇色の夜空の中、一人きりだった暗い世界を、その光で照らしてくれた。

心を閉ざして、目を逸らし続けてきた満天の星の輝きを、溢れんばかりの愛情と共に贈ってくれた。

十年経った今でも充分辛いけれど、寂しさに胸が張り裂けそうになるけれどーー。


それでもいつだって、貴方と見ていた世界は本当に綺麗でした。


ありがとう、私のことを見つけてくれて。

ありがとう、あの約束を憶えていてくれて。

ありがとう、ずっと一緒にいると言ってくれて。


ひとつひとつのありがとうが、私を解き放ってゆく。


これで、私の夜が明ける。


ようやく受け入れた想い出を、追憶の物語に仕舞い込んで、私はずっと、貴方のことを待ち続けます。



ーーこちらこそ、こんな俺を好きになってくれてありがとう。



ふわりとしたぬくもりに身体を包まれ、風のそよぎのように耳を掠めていったのは、空耳だったのかーー。