久遠の果てで、あの約束を。

ぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。やがてぽたぽたがボタボタになって、真っ白なワンピースの裾に染みを作っていく。



「渚っ……。好き……、大好きっ……」



すすり泣く声が、追憶のメロディーとなって流れていく。


好きだという言葉は、必要としないようにしていた。

未練になってしまうから。別れるのが辛くなるから。

視界がぼやけて、頬を熱いものが伝う。記憶の底から湧き出たのは、渚と過ごした日々よりもずっと前の、遠い昔の出来事。

まだ子供と呼ぶのにふさわしい年頃。たまたま訪れた教会で、偶然出逢った男の子。

名前も知らない男の子との交流が当時の私にはとても楽しくて、だから、別れの日が来るのが悲しくて仕方がなかった。

それを隠しもせずに泣きじゃくる私の前に、男の子は小さな小指を差し出して言った。


ーーじゃあ、僕とひとつ約束しようか。


首を傾げる私を見て、ふふっと子供らしく笑う。



ーーいつか僕が大きくなったら、絶対に君を見つけるから。そうしたら、これからはずっと一緒にいよう?



どう? これでもう寂しくない? なんておどけて笑う様に胸が暖かくなって、彼の小指に、そっと自分のそれを絡めた。