久遠の果てで、あの約束を。

今思えば、かなり酷い女だ。


成長した今ではそんな無意味な八つ当たりをすることこそはなくなったけれど、ここに来るとどうしてだが、渚がいたあの一年間に戻ったような気がしてしまう。

身体はこの十年で大人になったというのに、心はまだ、あの頃のままで。

いつまでも、過去にしがみついている。


それとも、忘れられない昔日が、自然とそうさせてしまうのかーー。


もう幼い少女ではないのだから、いい加減前に進まないといけないのに。

頭ではそれを理解しつつも、またいつものように、渚のいない年月を語りかける。

仕事のこと。毎日のこと。


「そういえばね、あの二人、この前結婚したの。えー、誰かって? そんなの決まってるじゃん。恵理ちゃんと篠原だよ」

花嫁姿の恵理ちゃん。綺麗だったなぁ。

ぽそりと呟いた声は、ほんの少し震えていた。

ウエディングドレスに身を包み、照れたように笑いながら新郎に腕を絡めている彼女を祝福しながらも、心の奥底では羨ましいと思っていた。

愛しい人と結ばれることができるのが、その幸せに永遠が保障されていることが。

ツンとした寂しさが胸に押し寄せて、髪を耳にかけながら目を伏せる。