久遠の果てで、あの約束を。

「あのさっ」



長い静寂を破ったのは、意外にも、渚の呟き声だった。


「どうして、俺と一緒にいてくれたの?」


疑問形というよりは、訴えるような声色だった。

かつての選択を悔やむような、それを選んだ私を責めるような、今まで過ごした時間を捨て去りたいと願っているような、そんな投げやりな言い方。

ひりひりと胸の内側が痛み、悔しさに涙が出そうになる。


「どうしてって、なんで今更……。ずっと一緒にいるって、約束したじゃん」


「そんなこと言ったって、病気持ちなんて面倒でしょ。幸せになれないってわかってるのにーー」


そこまで言って、急に言葉が途切れた。


言い過ぎだと思ったのか、渚はハッとした表情を見せてからバツが悪そうに俯いて、いたたまれなさそうに謝罪の言葉を並べる。



「ごめん、本当はこんなことが言いたい訳じゃないのに。ただ、優希が後悔してるんじゃないかって思って」


正直、ほんの少しだけ嬉しかった。

渚が、こんなにも私を想ってくれていることを知れたから。

けれど、それを素直に喜べないことが、それがそう遠くない未来に訪れる別れと向き合った故のものであることが、なによりも切なくて、苦しい。


「我ながら酷い奴だって思う。叶うはずもない約束で、ずっと優希を縛り続けた。本当なら、もっと別の未来があったかもしれないのに」


気弱な声は、もはや震えてるようにさえ感じた。




「俺と、出逢わない方がよかった?」