今までとは違い、今回は待ち合わせではなく現地集合。
海に着いたときには、もう渚は先に浜辺に腰を下ろしていた。
私もその横に座ろうとすると、服が汚れてしまわないようにと下にハンカチを敷いてくれる。
そういうさり気ない気遣いも随分と久しぶりのような気がして、切なさとくすぐったさに胸がきゅんと軋んだ。
夏ではなく春。それも平日の昼間に海に訪れるような奇特な人物は私達以外にはおらず、辺りには他に誰もいない。
優しい金春色の海は癒しの音色と共に白い波を寄せては返し、時折ちらちらと碧い光を滲ませている。
さらりとした白砂に手を預けると、指先がなにか硬いものに触れた。
そっとつまみ上げてみると、淡いピンク色に透き通った貝殻が、暖かな光を浴びて美しく煌めいていた。
「それなに?」
少し身を乗り出した渚が、興味津々そうに覗き込んでくる。
「桜貝」
「ふぅん」
桜貝を春陽に翳しながら、私は笑みを漏らす。
「知ってる? 桜貝ってね、〝幸せを呼ぶ貝〟って呼ばれてるんだよ」
こんな小さな貝殻が、幸せを呼んでくれるというのだから驚きだ。
海に着いたときには、もう渚は先に浜辺に腰を下ろしていた。
私もその横に座ろうとすると、服が汚れてしまわないようにと下にハンカチを敷いてくれる。
そういうさり気ない気遣いも随分と久しぶりのような気がして、切なさとくすぐったさに胸がきゅんと軋んだ。
夏ではなく春。それも平日の昼間に海に訪れるような奇特な人物は私達以外にはおらず、辺りには他に誰もいない。
優しい金春色の海は癒しの音色と共に白い波を寄せては返し、時折ちらちらと碧い光を滲ませている。
さらりとした白砂に手を預けると、指先がなにか硬いものに触れた。
そっとつまみ上げてみると、淡いピンク色に透き通った貝殻が、暖かな光を浴びて美しく煌めいていた。
「それなに?」
少し身を乗り出した渚が、興味津々そうに覗き込んでくる。
「桜貝」
「ふぅん」
桜貝を春陽に翳しながら、私は笑みを漏らす。
「知ってる? 桜貝ってね、〝幸せを呼ぶ貝〟って呼ばれてるんだよ」
こんな小さな貝殻が、幸せを呼んでくれるというのだから驚きだ。

