「見て、花冠作ったの!」


花のゴールデンウィークが明けてから、一週間と、ちょっと。

あの一件から宮野さんとは、時々お昼を一緒に食べる中にまでなった。

自分で焼いた鮭を食べていたら、ぽんと、頭の上になにかが乗った感触がした。


「……なにこれ」

「だから、花冠だって」

「それはわかる」

私が聞きたいのはそういうことじゃなくて、どうして私の頭に花冠を乗せたのかということだ。


何故かここ最近の宮野さんは、私を飾るのに精を出している。


一昨日はなにを血迷ったのか、髪の毛をツインテールにされた。

渚に見せたら思いっきり手で顔を覆われたのが頂けない。そんなに似合ってなかったですかね。おい。

彼女の突拍子のなさが顔を覆いやがった誰かさんに似ているなと、胸の奥でちらりと思う。

「とりあえず、これ返すね」

白詰草を器用に編んだ花冠を自分の頭から外して、宮野さんの頭に乗せる。薄々感づいてはいたけれど、とてもよく似合っている。


「えー、せっかく似合ってたのに」

不服そうな宮野さんに、またもや誰かさんの面影が重なった。

突拍子のなさだけではなく、人の心を無自覚に惹きつけるところも似ている。


もし昔の私が二人と知り合っていたら、どれだけそれを羨んだのだろう。


そんなとりとめのないことに頭を使っていると、また突拍子のない言葉が降ってきた。


「そういえば、もうすぐ母の日だね」