誕生日当日。私は学校をサボり、渚と二人で海に出かけた



渚の方は、病院に頼み込んで外出許可を得たらしい。

本人は話したがらないけれど、きっと無理を言って交渉したのだろう。


それをもの悲しく思うと同時に、二人でもう一度何処かに行けることを嬉しくも感じた。



きっと、これが最後のデートになる。



有終の美。なんて言葉を思い出して、つい思い出してしまって。それを否定しながらも、とびきり綺麗にしなくてはと丁寧に身を飾る自分がいた。


スイートピーの花びらのように柔らかなシフォンワンピース。その布地ではあのネックレスとよく似た、だけど少しだけ違うブルーとパープルとほのかなピンクの花々が淡く混じり合っている。

三月とはいえまだ僅かに寒々しさが残るので、上から白いレース編みのワンピースを羽織った。胸元では、あのときに貰った小さな夜明けが揺れている。

足は短いレースの靴下と、リボンがついた可愛らしいデザインの革製のサンダルを履いて、髪も一部分を編み込んで、メイクだっていつもの三倍は時間をかけた。



ただ海に行くだけなのに、こんなにも気合いを入れてお洒落して。


傍から見れば、なんて滑稽なのだろう、


けれど、私にできることはもうこれしか残されていなかった。