夢の終わりが近づいている。とでもいうのだろうか。



カレンダーにバツ印をつけていく度、恐怖に手が震えてしまう。


あと何日、渚は生きられるのだろう。


もうすっかり外は春めいていて、花壇では親指姫が住んでいそうなチューリップが色とりどりに咲き乱れ、たおやかで情緒的な桃の花が街のいたるところで甘い微笑みを浮かべている。



悲しいほどに美しい、春の盛りだ。



この一日が無事に過ぎる日々が、ずっと続いてくれたなら。


渚と一緒に、また次の季節を迎えることができるというのに。

ずっと、渚の傍にいられるというのに。


叶わない願いに縋りつき、いつか来る別れに怯え続ける。


まるで、終わらない夜の闇に囚われているみたいだ。




そんな中、唯一起きたいいことは、渚が無事に十六歳の誕生日を迎えられたことだ。


誕生日プレゼントはなにが欲しいか尋ねたら、渚は少し考えるような素振りを見せて、こう言った。



「特に欲しいものはないけど、去年は行けなかったから、一緒に海に行きたいかな」