「ほら見て渚、今日はすっごくいい天気だよ」





病室のカーテンを開けながら、渚の方を向いて微笑む。


二月も下旬に差しかかり、外の空気は今までの寒さが嘘のようにすっかりぬるくなっていた。


「せっかくだし窓も開けようか。あれ、これって勝手に開けていいんだっけ? まぁいいや。怒られたら謝ればいいし」



わざと沈黙が続かないように喋りながら窓を開けると、春を運ぶ東風と風雅にさえずる鶯の声が、同時に入り込んできた。




「だいぶ暖かくなってきたから、もう冬も終わりかな。春が来るね」





もう、春は私達の手の届くところまで来ている。



渚と過ごす、最後の春が。