大波乱のバレンタインを無事に乗り切り、間の抜けた空気感の否めない五時間目の授業中に、事件は起こった。
あくびを噛み殺しながら適当にシャーペンをノートに走らせていると、ガシャン! という鋭い音が辺りを劈いた。
「うぅっ……」
恐らく椅子が倒れたのだろう。乱暴に転がった椅子の傍らでは、渚が苦しそうに胸を抑えていた。
「おいっ、どうした!?」
「誰か保健室の先生呼んできて!」
いつもと変わらない光景が、一瞬にして激変した。
近くにいた人は渚の元へ駆け寄って、先生も血相を変えて救急車を呼びに行ってしまった。騒ぎを聞きつけた隣のクラスの人たちも、野次馬根性で集まってくる。
あっという間に混沌と化した教室で、クラスメートを掻き分けて、渚の隣にしゃがみ込む。
「渚っ、大丈夫!?」
懸命に声をかけてみるも、返事どころか頷いたり首を横に振ったりすることすらままならない。自分になにもできないことが悔しくて、涙が溢れそうになる。
やがて顔を真っ青にした先生が戻ってきて、救急車で病院へと運ばれた。
学校帰りに病院へ行って、看護師の人に渚は薬で眠っていると言われたので渚のお母さんから話を聞いた。
結果は案の定、再入院。
思わず、唇をぎゅっと噛み締めた。強く握った拳が、汗でじっとりと湿っていく。
ついこの間、退院できたばかりなのに。
世の中平等なんて嘘だ。
そうでなければ、どうして渚だけがこんな目に遭ってしまうのだろう。
いつの間にか、タイムリミットはもう目の前まで迫っていた。
あくびを噛み殺しながら適当にシャーペンをノートに走らせていると、ガシャン! という鋭い音が辺りを劈いた。
「うぅっ……」
恐らく椅子が倒れたのだろう。乱暴に転がった椅子の傍らでは、渚が苦しそうに胸を抑えていた。
「おいっ、どうした!?」
「誰か保健室の先生呼んできて!」
いつもと変わらない光景が、一瞬にして激変した。
近くにいた人は渚の元へ駆け寄って、先生も血相を変えて救急車を呼びに行ってしまった。騒ぎを聞きつけた隣のクラスの人たちも、野次馬根性で集まってくる。
あっという間に混沌と化した教室で、クラスメートを掻き分けて、渚の隣にしゃがみ込む。
「渚っ、大丈夫!?」
懸命に声をかけてみるも、返事どころか頷いたり首を横に振ったりすることすらままならない。自分になにもできないことが悔しくて、涙が溢れそうになる。
やがて顔を真っ青にした先生が戻ってきて、救急車で病院へと運ばれた。
学校帰りに病院へ行って、看護師の人に渚は薬で眠っていると言われたので渚のお母さんから話を聞いた。
結果は案の定、再入院。
思わず、唇をぎゅっと噛み締めた。強く握った拳が、汗でじっとりと湿っていく。
ついこの間、退院できたばかりなのに。
世の中平等なんて嘘だ。
そうでなければ、どうして渚だけがこんな目に遭ってしまうのだろう。
いつの間にか、タイムリミットはもう目の前まで迫っていた。

