「言っておくけど、バレンタインならないからね」



嘘。本当は、何日もかけて準備してきた癖に。

渡すのを楽しみにしていた癖に。


でも、ありったけの想いを込めたチョコレートは、その人の心そのものだ。


女の子の心をいっぱい独り占めしている彼からすれば、私の心を貰ったところでその他大勢と一緒なのだろう。

ちっぽけなプライドが邪魔をして、つい無駄に意地を張ってしまう。



「別に私からのがなくたって、他の子から沢山貰っているんだからいいじゃない」


ほら、そんな心にもないことを言って。


「まぁね。でも、くれるって言われたのは断っちゃった」


「……へ?」



空いた口が塞がらない。手が完全に止まってしまう。

この人今、なんつった?



「え、じゃあ、机とか靴箱に入ってたのは?」


「なに入ってるかわかんなくて怖かったから、適当に友達にあげた」


「どうして」


「だって貰ったって応えられないし、あんなに食べたら鼻血ものだよ」


「えぇ……」