「はぁ……」



そんなキャッチコピーにまんまと乗せられ、バレンタインにチョコレートを手作りしようと決心したのが今月の初め。


そして私は、そのことを滅茶苦茶に後悔している。

休み時間にチョコレートのレシピを調べ、放課後にはお店巡り。

あっちのお店でラッピングの箱を買い、こっちのお店に行ってリボンを購入し、他のお店を訪れたらもっと可愛い包装紙があって、迷った挙句に予備という名目で二個目、三個目のラッピング材を買い込んで。

前日には、お菓子の材料を大量に用意してチョコ作りを開始した。


何度も試作品を作っては食べてを繰り返し、そしてーー。


完成したチョコレートを眺めて満足したところでようやく、パチンと我に返ったのだ。

駄目だこれ。完全に張り切り過ぎた痛い女だ。

とぼとぼと通学路を歩きながらも、努力の結晶はちゃっかりと鞄の中に隠してある。


上品な純白の箱に、大人びた黒のレースリボン。

中身は、甘いチョコレートマカロンだ。

ミルクチョコとホワイトチョコのを、四つ入りの箱にオセロみたいに交互に二つずつ入れてみた。

ちょっと苦めのガナッシュを挟んで、チョコペンや小さなシガレットクッキー、アラザンなんかも使って綺麗にデコレーションまでして、我ながら気合いの入れ方が半端じゃない。


自分の用意周到さに呆れながらも、心の中では喜んでくれるかな、美味しいって言ってくれるかな、なんて密かに期待して。

私の複雑な乙女心とは裏腹に、はんなりと匂やかに咲く梅の花はほろりとその薫りをこぼし、無邪気さの中に若干の色っぽさを滲ませたパンジーが奔放に花弁を広げている。

こうして、本命チョコレートと恋の思惑をそっと秘め、意を決して学校に臨んだ結果があのピンクである。