その日は朝からピンクだった。

別に、本当にカーテンやら黒板やらがピンク色に模様替えされた訳ではない。なんというか、空気がピンク。ついでに言うと、ハートまで飛び交っている。

この馬鹿みたいに浮かれまくった空気には、勿論相応の理由がある。


そう、バレンタイン。

クリスマスに次いで我らが盛り上がる日。

聖ヴァレンティヌスに纏わるあれやこれややキリスト教のすったもんだはまるでわからないけれど、大量のチョコレートと一緒に愛が飛び交う日。くらいの認識は流石にある。

ちなみに海外では「恋人達のお祭りの日」とされていて、男性から女性に贈りものをするのが一般的らしい。

当日、花屋には〝貴方を愛しています〟という花言葉を持つ深紅の薔薇を買い求める男性が殺到するとかしないとか。


要するに日本のバレンタインは、お菓子会社に乗せられて単なる風習と化してしまった独自のイベントという訳だ。

でも、たとえその通りだったとしても、お世話になったあの人へ、大切なあの人への想いに嘘はない。

だから今年も、溶けてしまいそうにあったかい想いをチョコに託して贈るのだ。



ありがとう。これからもよろしく。


愛しています。