新学期が始まり、冬休みの浮かれた空気もようやく抜けてきた寒い朝、赤いマフラーを巻いた私は、上機嫌に渚の家のインターホンを押した。

もうすっかり見慣れてしまった扉の向こう側からは、ドタドタと階段を駆け下りる音や、慌てたような声が微かにーーいや、結構はっきりと漏れている。

そしてようやく扉が開き、待っていた人とご対面。


「ごめん優希! 遅くなった!」

「ううん、全然平気……って、なにこれ!?」


にこやかに返事をしたのもつかの間、渚の首元が視界に映った瞬間、思わずぎょっとしてしまった。

彼の首には、クリスマスの日に私が贈ったマフラーが巻かれている。そこまではいい。むしろ、自分があげたものをこうして使ってくれているのは素直に嬉しい。

だがしかし、これだけははっきり言わせてもらう。


「渚、マフラー結ぶの下手過ぎ!」

一言で言うとぐっちゃぐちゃ。というか、他にどうこの惨劇を表現すればいいのか。あまりにも下手くそで、溜め息を吐きたくなってしまう。


「もう、なにをどうすればこんな酷いことになるの? 私に巻いてくれたときはちゃんと巻けてたじゃん」

「ごめんごめん。人に結ぶのはできるんだけど、自分で自分のをやるのは苦手なんだよ」


ブツブツと小言を漏らしながらも、絡まったマフラーの結び目を解いて巻き直す。お叱り意味合いも込めて、頬をぺちっと叩いてみた。