「まさか優希ちゃんが遊びに来てくれるなんて思うとらんかったからねぇ。なんもあらへんけど、ゆっくりしていってな」
「うん。ありがとう」
「そうや、お母さんも呼ばんとねぇ。呼んでくるから、先におせち食べててええよ。優希ちゃんも、そのつもりで来たんやろ?」
「えっと、まぁ……。あはは」
お祖母ちゃんが居間から立ち去ると、ようやく一息つく余裕ができた。
厳格なお母さんとは対照的に柔和なお祖母ちゃんとは、比較的接しやすい。今だって、気まずさを感じずに話すことができた。
それにしても、ここは全然変わっていない。
床には畳が敷かれていて、壁には雪月花の掛け軸がかかっている。茶箪笥や旧式のテレビ、黒電話の位置なんかも昔のままだ。
こたつの中に足を伸ばし、ちゃぶ台の上のおせちを見やる。
漆塗りの重箱にぎっしりと詰められた栗きんとんや黒豆や海老や田作り、昆布巻きに紅白のかまぼこ、数の子と色とりどりの煮しめ。
それだけではなく、甘い伊達巻に鯛の焼きものも入っている。他にもたくさん、おめでたい意味やいわれが込められた食材がところ狭しと並んでいる三段の箱は、それはもう和の宝石箱と呼べるほどだった。
別にご飯を食べに来たのではないのだが、気合いの入った料理を目の当たりにされては、つい本能で空腹を感じてしまう。
茶色い箸を手に取って花の形をした人参を掴もうとしたとき、襖が遠慮がちにそっと開いた。
「うん。ありがとう」
「そうや、お母さんも呼ばんとねぇ。呼んでくるから、先におせち食べててええよ。優希ちゃんも、そのつもりで来たんやろ?」
「えっと、まぁ……。あはは」
お祖母ちゃんが居間から立ち去ると、ようやく一息つく余裕ができた。
厳格なお母さんとは対照的に柔和なお祖母ちゃんとは、比較的接しやすい。今だって、気まずさを感じずに話すことができた。
それにしても、ここは全然変わっていない。
床には畳が敷かれていて、壁には雪月花の掛け軸がかかっている。茶箪笥や旧式のテレビ、黒電話の位置なんかも昔のままだ。
こたつの中に足を伸ばし、ちゃぶ台の上のおせちを見やる。
漆塗りの重箱にぎっしりと詰められた栗きんとんや黒豆や海老や田作り、昆布巻きに紅白のかまぼこ、数の子と色とりどりの煮しめ。
それだけではなく、甘い伊達巻に鯛の焼きものも入っている。他にもたくさん、おめでたい意味やいわれが込められた食材がところ狭しと並んでいる三段の箱は、それはもう和の宝石箱と呼べるほどだった。
別にご飯を食べに来たのではないのだが、気合いの入った料理を目の当たりにされては、つい本能で空腹を感じてしまう。
茶色い箸を手に取って花の形をした人参を掴もうとしたとき、襖が遠慮がちにそっと開いた。

