フェリーを降りてターミナル駅を出ると、そこには何処となく寒々しい光景が広がっていた。

何年も前の記憶など当てにはならないが、昔来たときはもっと活気があったような気がする。

過疎化という単語がぱっと思い浮かんで、心の中が鈍く濁った。

近頃問題となっている現象に対して一介の女子高生風情が偉そうなことは言えないが、変わって欲しくないなぁという漠然とした思いがじわりと滲んでいく。

古くなった記憶とスマホの地図アプリを頼りにお祖母ちゃん家までの道のりを辿ると、季節は違えどその街並みはあのときとはそれほど変わっていなかった。

何処か寂れた景色を覆うように雪が降り積もり、蝋細工を思わせる人工的な質感を持った黄色い蝋梅や、ぽたりぽたりと赤と白の花をまるごと雪の上に落とす古風な寒椿が、殺風景で閑静な住宅街に彩りを添え、周辺に凛と引き締まった印象を与えていた。蒼く冴え渡る空と素手で掴み取ったような凍雲が、余計に冬を感じさせる。

地面を汚す足跡は私のものだけで、お正月だというのにも関わらず、いや、お正月だからと言うべきか、人の気配は他になかった。


世界に私一人だけみたい。


そう呟いて、鼻で笑った。そんなこと、絶対にあるはずがないと言うのに。

一歩一歩足を進めるたびに、この先のことが思いやられる。本当にこれでいいのか。もっと時間が経ってからの方がいいのではないか。今からでも遅くはない。ここで引き返して、ターミナル駅に向かえばいい。そうすれば、傷を負うことはない。本当にそれでいいかは別として、全てをなかったことにできる。

だけど、私は歩いた。消せない不安が募っても、鼓動が加速していっても、ただひたすらに歩き続けた。


それが、幸せな未来に繋がると信じて。