オーソドックスな花から名前の知らないマニアックな種類のものまで揃えられ、お正月だからなのか、店先には真っ赤な南天が並んでいる。

色あざやかな花に彩られた場所、それは言わずもがな、花屋だった。


「この時間ならまだ店番してると思うから。ささ、入って入って」


まるで自分の第二の家かのような態度でお店の中に入っていく。しっかりと手を引っ張られて、半ば無理やり引き入れられた。



「いらっしゃいませー」


奥から聞こえた声は何処か馴染みがあって、誰の声だったっけと記憶の底を手繰っていると、答え合わせが済む前に、声の主が姿を見せた。


「なっ……」

「え、は……?」


お互いにびっくり、そして硬直。


声の主の正体は、黒いエプロンをかけた篠原だった。


ちょっとこれどういうこと!? という意味合いを込めて恵理ちゃんの方を振り返る。少し遅れて髪の毛が頬に直撃する。ちょっと勢いが余ったらしい。それくらい、衝撃的だったのだ。