久遠の果てで、あの約束を。

けれどこんなに浮かれている自分を渚に見られたら恥ずかしいなと思い直し、逆に背筋をぴんと伸ばして立ってみたりと、目隠しをされた小動物のように右往左往していた。

だから、待ち合わせ十分前になって渚が来たとき、己を支配していた緊張が一気に解けて心の底から安心した。

「ごめんね、待った? 寒かったよね」

「ううん。私も今来たところだから」


本当はだいぶ前からここにいたけれど、おくびにも出さずに返事する。天気予報いわく今日は夜から雪が降るらしいが、心はぽかぽかと温かく、頬も緩みきっている。


「じゃあ、行こっか」

「うん」


ようやく退院できたからなのか、はたまたライブが楽しみで仕方ないからなのか、渚のテンションは普段よりも高く、声も雰囲気も弾んでいる。顔色だって、あの病室に篭っていた頃よりもずっといい。


街中はシュティレのグッズを鞄につけていたり、メンバーのイメージカラーで全身を固めたシュティレのファンと思わしき人達で溢れていて、ちょっとだけ笑ってしまった。