宮野さんと別れて自分の家に帰ってすぐ、私は自室のドアを開けた。飽きるほど見慣れた空間が目に入る。


手作りのうさぎのぬいぐるみや、自分で刺繍を入れたクッション。繊細なアクセサリー。ハンドメイドのものもあれば、既製品のものもある。


私の部屋は、結構ものが多い。


綺麗なものをかき集めれば、少しは変わるかもしれないと思っていた。まぁ、結果は言わずもがな。

そのかき集めたうちのひとつ、本棚の上に裏返したまま放ったらかしにしていたものを元に戻す。

透明色と乳白色のステンドグラス製の、サンカヨウに似た色合いの写真立て。写真はなにも入っていない。

宮野さんのあのスマホケースは、誕生日に幼馴染がプレゼントしてくれたのだと言っていた。所謂、想い出の品という奴だ。


ここにある数々の私物の中に、そんな素敵なものはない。暇潰しで作ったのが半分、残りはなんとなく流れで買った。

どれもそれなりに気に入ってはいるけれど、大した思い入れはない。

だけど、いつか彼女みたいに、想い出を形にして仕舞ったり、切り取ってあの写真立ての中に閉じ込めたりできる日が来るのかもしれない。

そう思うと、不思議と胸が温かくなった。