「なんか、最近急に寒くなったよねー」


頬杖をついた恵理ちゃんが、緩く巻いたふわふわ髪を指先で弄りながら不満げにこぼす。

ブレザーの下にはボルドー色のカーディガン。黒タイツに膝掛けと、防寒対策はばっちりだ。


「もう暖房だけじゃ全然足りなくてさー。ホットカーペットとこたつがないと凍っちゃう」

死角からの衝撃の告白に、微妙に頬が引き攣った。


「へ、へぇ……」

なんというか、電気代が凄いことになりそう。


そんな私にはお構いなしに、篠原があからさまに顔を歪めた。


「恵理の部屋は暑過ぎるんだよ。つか、夏はエアコンの設定温度十八度にしてた上に、扇風機つけてアイスまで食ってたのに寒いのは駄目ってどうなってんだよ。このままだと体壊すぞ」


「うるさいなぁ。別に大丈夫だって。樹だって、真夏に一日中外でサッカーしたり、逆に真冬に半袖短パンだったりするじゃない。そっちの方が風邪引きそう」


「それ、小学生の頃の話だし。今はもうしてなーーいや、サッカーはたまにするけどさ。つか、一昨年寒暖差で部屋の窓ガラス割ったのは何処のどいつだよ」


「過去は振り返らない主義者なの」