「それにしても、まさか高嶺さんが届けてくれるなんて思わなかったなぁ」と、ぱっちりした瞳が悪戯っ子の色を宿す。


「え、なんで?」


「だって私、高嶺さんに嫌われてると思ってたから」


一瞬ポカンとして、その後すぐにピンときた。

確かに私の態度は、相手からしたら嫌われていると感じるような冷たいものだ。蓋をしていた罪悪感が、今更ながらに溢れ出す。


嫌ってはいない。ただ、人と関わりたくなかった。


「あ、えっと、それはその……、ごめん」

しどろもどろに謝る私に対して、宮野さんはくすりと笑みを漏らした。

「別に怒ってるんじゃないって。ちょっとからかってみただね。ねぇ、優希ちゃんって呼んでもいい?」

そうは言っても、まだ不安が残っているのか、こちらの顔色を窺うように視線を向けられる。答えは勿論。


「いいよ」



宮野さんはゆっくりと、閉じていた蕾が花開くような満面の笑みを咲かせた。


その日、私は宮野さんと一緒に帰った。宮野さんは中学生時代の話や、二歳年下の妹の話をしてくれた。

楽しそうに喋る笑い上戸の彼女は、やっぱり天使みたいだった。