しとしとと小夜を溶かすような時雨の音が窓越しに聞こえてくる頃、ピーンポーンと場に合わないインターホンがいきなり割り込んできた。

こんな時間に誰だろうという素朴な疑問が、いつもとは異なった響き方に掻き消される。

不気味で陰鬱でおぞましい、あまりよくない予感を感じさせるその音に、全身を巡る血液が凍りそうになる。

ざらざらと嫌な胸騒ぎがして、いつもなら必ず確認するはずのモニターにすら見向きもせずにソファを立ってふらふらと歩き、上下の鍵とチェーンを外して扉を開けた。


その刹那、ぐっしょりと濡れた質量がもたれかかってくる。

傘も差さずにここまで来たのか、髪や服から滴り落ちる水からは雨の匂いがする。

いくら雨が降っているとはいえ、私と彼の家の距離を考えると、この降水量でここまでずぶ濡れになることは到底ありえない。


一体どれだけ長い時間を、彼は外で過ごしたのだろう。


「ちょっと渚? どうしたのいきなり……」

「また……」


私の肩に顔を埋めて、渚が絶望に満ちた声を絞り出す。