ゴールデンウィーク前日の、四月下旬の放課後。
宮野さんの席に、スマートフォンが置き去りにされていた。
ダスティピンクと薄いオレンジのガーベラに、苺みたいに赤いリボンがあしらわれた、華やかで可愛らしいスマホケース。宮野さんの雰囲気によく似合う。
それはさておき、私はこれをどうするべきか。
私がこれを届けなくてはいけない理由は特にない。
だけど、宮野さんがこのまま家に帰るまでスマホを学校に忘れてきたことに気づかない可能性がある。彼女の家が学校から近いのか遠いのかは知らないけれど、遠かった場合戻るのは大変だろう。
まだ学校内の何処かにはいるはずだし、いなかったとしたら職員室に届ければいい。
そう決心し、自分のではないスマホを持って教室を飛び出した。
階段を駆け下りていると、下の階からぱたぱたと足音が聞こえてきた。
「あれ、高嶺さん?」
タイミングよく現れたのは、このスマホの持ち主こと宮野さん。
その視線が私の手元を捉え、視線が驚きの色に染まる。
偶然にも、彼女は赤紫色のガーベラのヘアピンを身につけていた。
「それ、私のスマホ……」
階段を数段分降りて、目を丸くする宮野さんにスマホを手渡した。
「忘れてたみたいだから」
いつも通り短く素っ気なく口にしたはずの言葉は、ここ最近楽しい日々を過ごしていたおかげか、以前より声色が優しくなった。
宮野さんにも、同じように聞こえたらしく、
「ありがとう。高嶺さん」
ふくりとした頬を緩めて、愛らしくはにかんでくれた。
宮野さんの席に、スマートフォンが置き去りにされていた。
ダスティピンクと薄いオレンジのガーベラに、苺みたいに赤いリボンがあしらわれた、華やかで可愛らしいスマホケース。宮野さんの雰囲気によく似合う。
それはさておき、私はこれをどうするべきか。
私がこれを届けなくてはいけない理由は特にない。
だけど、宮野さんがこのまま家に帰るまでスマホを学校に忘れてきたことに気づかない可能性がある。彼女の家が学校から近いのか遠いのかは知らないけれど、遠かった場合戻るのは大変だろう。
まだ学校内の何処かにはいるはずだし、いなかったとしたら職員室に届ければいい。
そう決心し、自分のではないスマホを持って教室を飛び出した。
階段を駆け下りていると、下の階からぱたぱたと足音が聞こえてきた。
「あれ、高嶺さん?」
タイミングよく現れたのは、このスマホの持ち主こと宮野さん。
その視線が私の手元を捉え、視線が驚きの色に染まる。
偶然にも、彼女は赤紫色のガーベラのヘアピンを身につけていた。
「それ、私のスマホ……」
階段を数段分降りて、目を丸くする宮野さんにスマホを手渡した。
「忘れてたみたいだから」
いつも通り短く素っ気なく口にしたはずの言葉は、ここ最近楽しい日々を過ごしていたおかげか、以前より声色が優しくなった。
宮野さんにも、同じように聞こえたらしく、
「ありがとう。高嶺さん」
ふくりとした頬を緩めて、愛らしくはにかんでくれた。

