久遠の果てで、あの約束を。

「優希、俺のこと嫌いになった?」


目頭がジンと熱くなり、不覚にも涙ぐみそうになる。

あぁ、そうか。

渚の言ったことに嘘はなくて、きっと概ねは本心なんだろうけど、その中には確かに、私への気遣いも込められていて。


彼は、こんなにも優しい人だったんだ。


知っているようで知らなかった。知ったような気になっていた。

だからあのとき渚は、私に奇跡をくれたんだ。


「ううん……。嫌いになんて、なる訳ないじゃん……」


掠れた声が、秋の夕陽に溶けていく。

それと一緒に、瞳の奥の不安も消えた。


「俺も。そんなことくらいで、優希を嫌いになったりしない」


あんなに酷いことをしたというのに、渚はそんなことと言い切ってあっさりと赦してしまう。


「でも、ちょっとだけ寂しかったから、もう俺から離れないで」


それは、酷く儚い懇願だった。

脆く弱い糸のように、少しでも油断したらするりと解けるかプツリと切れてしまいそう。

でも、そんなのは絶対に嫌だ。

怖がりな子犬みたいに少し震えている手を取って、そっと自分の両手で包み込む。


「ずっと離れない。傍にいるって約束する」


失って始めて気がついた。

渚が、他の誰よりも大切な人だということに。

もう絶対に、この手を離したりしない。

この両手は、貴方のためだけにある。


私の手が切ないくらい微かな力で握り返されたとき、一般公開終了のアナウンスが、遠くで聞こえた。