明日もきみが心から笑えますように


 ・・・うぅ。気持ち悪い・・・。何なのあれ。速いし回転多すぎだし。何で乗っちゃったんだろう・・・。
 「美波、お茶買ってきた」
 「・・・ありがとう。ごめんね」
 「俺こそごめん。無理して乗らなくて良かったのに」
 「無理はしてないの。私も結構乗れる方だし。でも、ここのがちょっと・・・」
 「どうする?来たばっかだけど、もう遊べないよね。家まで送ってくよ」
 「大丈夫!ちょっと休めば平気。あ、ごめん、ちょっと横になっていい?」
 「じゃあ俺、膝枕するわ。はい」
 「え?そんなの悪い・・・」
 「ほら、いいから」
 そう言って蒼は私の頭を膝に乗っけてくれた。何でこんなことしてくれるんだろう。私、ほんとに蒼のことふったっけ?そんなこと考えながらしばらく横になっているとだんだん楽になってきた。大丈夫、動けそう。
 「蒼、もう大丈夫そう。次、何乗ろうか」
 「え、ほんとに大丈夫?」
 「うん、あ、じゃあこれ乗ろう!これこれ」
 「ゴーカート?え、大丈夫?」
 「うん、これなら大丈夫」
 ゴーカートなら座ってられるしジェットコースターほど速くないし、楽しめるからいいだろう。ホントは観覧車とかゆっくりなのに乗りたかったけど観覧車で二人っきりはまずいということは認識している。それで一番ましだと考えたゴーカートを選んだのだ。
 その後、私たちはいくつかアトラクションに乗ってお昼ご飯を食べることにした。
 「じゃあ、俺これで。美波は?」
 「あ、私も同じのでいいよ」
 「じゃあ同じの二つ」
 「ありがとう。あーお腹すいた」
 「美波が元気になって良かった」
 「え?あー本当に蒼はそういうことさらっと言うなぁ」
 「そういうことって?」
 「ん?だから、女子が喜びそうなことをさらっと言ったり、やったりするなぁって」
 「たとえば?」
 「たとえばって・・・。膝枕とか?」
 「膝枕?でも俺、初めてやったよ?」
 「嘘だ。こなれ感出てたもん」
 「そう?で、美波は嬉しかったの?膝枕」
 「私は・・・うーんどうだろう」
 「そっか・・・」
 いや、そんな明らかに落ち込む?だって私が嬉しがっても、もう蒼には関係ないし。それに蒼のことふっといて嬉しいとか言ったらなんか私が軽い奴みたいになっちゃうし。ていうかよくよく考えたら、自分のことふった人を膝枕するとか蒼の方がおかしくない?
 「おーい、美波。どーした」
 「え、あ、ごめん。ぼーっとしてた」
 「ほら、料理きたから。食べよ」
 「ほんとだ。いただきまーす。・・・美味しい!何これ!!美味しすぎる・・・」
 「ね、ここ来て良かったでしょ」
 「うん」
 またここの遊園地、莉子と来ようなんて思っていると上から聞き慣れた声がふってきた。 
 「あれ、美波と山本?」
 「ん、あれ、どうしたの莉子と相原くん」
 「どうしたのってデートだけど・・・。あ、ここ一緒に座っていい?」
 「私はいいけど。あ、蒼は?」
 「いいよ。ていうか匠海話すの久しぶりだなぁ」
 「そうだな。しばらくLINEでしか話してなかったもんな」
 蒼と相原くんが男子トークに花を咲かせたところで莉子が険しい顔をして聞いてきた。
 「美波。山本のことふったんじゃなかったの?」
 「ふったよ。ふったんだけど、蒼がもうチケット買っちゃったからって」
 「で、来ちゃったんだ?山本もタフだねぇ。自分をふった女子と二人きりで遊ぶって」
 「そう、私が気まずいんだよー。ねぇ莉子お願い。一緒にまわってくれない?」
 「え?せっかくのデートを邪魔するつもり?」
 「あ、そうだよね。ごめんごめん。忘れて」
 「あはは、冗談だから。いいよ、あの二人も楽しそうだし」
 莉子が視線を移したのでつられて私も同じ方向をみると楽しそうに笑いながら話す蒼の顔が目に入ってきた。ほんと、笑うと可愛い顔するよなぁ。
 「ね、匠海、山本、ここからはさ、四人でまわらない?」
 「え、でも蒼たち邪魔したら悪いだろ」
 「あ、相原くん、全然大丈夫!むしろ大歓迎!!ね、蒼」
 「・・・そーだな」
 あれ、もしかして怒った?でも怒るようなこと言ってないし。・・・気のせいか。その後四人でわいわいやって、(相変わらず蒼はなぜか不機嫌だったけど)、もうすぐ日が沈む時間になった。
 「最後何乗る?莉子と相原くんは?」
 「ごめん、美波。私たちこの後レストラン予約してあるから。もう行かなきゃいけないの。ね、匠海!」
 「ごめんね、二人とも。じゃあ行こうか莉子」
 「うん。じゃーねー、美波。また遊ぼ!」
 「あ、うん。ばいばい」
 ・・・莉子!?こういうことは先に言ってもらわないと困るんだけど!?ただでさえなぜか不機嫌な蒼と二人って更に気まずいんですけど。あれから全く話しかけてこないし。もう、自分から誘っといてなんなの!?
 「蒼―?最後に何乗りたい?」
 「・・・観覧車」
 「あ、了解、観覧車ね。って観覧車!?だめっそれだけは!!」
 観覧車は・・・。密室に、しかもいい感じにライトアップされた観覧車に不機嫌な蒼と乗るなんて何が何でも無理!
 「あっそ。じゃ、ジェットコースターもう一回乗る?」
 「え、何でそんな事言うの?午前中のこと忘れた?」
 「覚えてる。でも観覧車の他に乗りたいのなんてそれしかないし」
 どうしよう。観覧車は嫌だけど、ジェットコースターの方がもっと無理。もう、乗るしかないか。
 「分かった。観覧車乗ろう」
 「・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・」
 気まずっ。気まずすぎる。会話がない。何なんだこの時間は。ただただ苦痛でしかない。そういえばなんで蒼怒ってるんだっけ。
 「蒼、何で怒ってんの?理由言ってくれなきゃ分かんないよ。せっかく遊びに来たのにさ、こんな空気嫌だよ」
 「美波が・・・・・って言ったからだろ」
 「え?聞こえない」
 「美波が匠海たちのこと大歓迎って言ったからだろ。それじゃあ俺といても楽しくないみたいじゃん」
 「そんな事ない。楽しかったよ?」
 「ほんとに?・・・てっきり俺・・・。ごめん。空気壊して。ていうか俺、かっこわる・・・。はぁ、最悪」
 「そんな事・・・。私こそごめん。実のこと言うと蒼のことふったのに二人で遊ぶのって気まずくて」
 「・・・そっか。でも来てくれたんだよな。やっぱり優しいな、美波は」
 そう言って蒼は笑う。でもその笑顔はどこか悲しそうな笑顔だった。
その後、蒼はわざわざ家まで送ってくれた。別れ際、「また四月にね」と言ったら、蒼が見せた笑顔はいつもの可愛い顔で安心した。
四月になったらクラス替えがある。「蒼と同じだといいな」なんて少しだけ思ってしまっている自分がいた。