翌日。いま私は屋上にいる。そう、蒼をふるために。蒼が来たら、すぐに返事をして、「春休みは遊べない」って言って帰ろう。そしたら春休みが始まる。四月にはもう忘れてるはずだよね。
 「美波?何、話って。わざわざこんな寒いとこで話さなくていいのに」
 「ごめん。あんまり人に聞かれたくなくて」
 「そ。じゃあ、話して」
 「あの、蒼、私に「好き」って言ったよね?」
 「うん、言った」
 「それってさ、友だちとしてじゃなくて・・・」
 「うん。付き合って欲しいって意味」
 「あ、そうだよね。でね、そのことなんだけど・・・」
 ・・・なんで声が出ないの?あんなに練習したのに。いざとなったら言えないなんて。蒼がかわいそうだから?なら「いいよ」って言えばいい。
でも、私は蒼をふる。ちゃんと言わなきゃいけない。
 「ご、ごめんなさい。私、蒼とは付き合えません」
 「え・・・」
 「だから、春休みは遊びに行けません。・・・それだけだから。ごめんね、寒いのに」
 これでいい。言うことは言った。・・・これでいい。帰ろう。それでこれから始まる春休みの計画を立てよう。せっかくの休み、楽しまなきゃ損だし。屋上のドアを開けて中に入ろうとしたとき、腕を掴まれて外に戻されてしまった。
 「春休み、遊ぶよ?もう決まってるから」
 「え?でも私、今、蒼のこと・・・」
 「うん、それはショックだけど。でももうチケット買っちゃったし。だから、友だちとして。はい、チケット。じゃあ、また連絡するね」
 蒼はチケットを渡して中に入って行ってしまった。え、ふったのに?友だちとして?何、どういうこと?思っていた反応と真逆でまた頭が?マークだらけになる。
 「分かんないよ・・・」
そう言って蒼に渡されたチケットを見ると、カップルが多く訪れるという、遊園地の名前が記されていた。