明日もきみが心から笑えますように


 翌日。私は蒼の家に向かっている。五年かかって、やっと心から笑えるようになった。これで蒼に会える。そう思って杏花音さんに連絡すると、一緒にお墓参りに行こうという話になった。
 「あ、杏花音さん!」
 「美波ちゃん。じゃあ、行くか」
 「はい」
 杏花音さんの車に乗って、約一時間ほどで着くという蒼のお墓を目指す。
 「あの、こんなにかかっちゃってすみませんでした」
 「いいのいいの。来てくれただけで嬉しいから。ね、杏花里」
 「うん。また会えて嬉しいよー!」
 「ありがとうございます」
 二人は、私を全く責めなかった。こんなに来るのが遅くなったのに、笑顔で迎え入れてくれた。蒼みたいに、優しい。その優しさに触れて、鼻の奥がつんとした。
 「はい、着いたー!」
 「美波ちゃん、降りよう」
 そこには、たくさんのお墓があってどこに蒼のがあるのかは分からなかった。桶に水を入れて、二人についていく。二人とも、全く迷わずに迷路みたいなお墓の間をどんどん進んでいく。よく来ているんだろう。
 「ここが、蒼のお墓」
 そこには、「山本蒼」と名前が記されている。私は、お墓に優しく水をかけた。
 「蒼―、美波ちゃんが来てくれたよー!」
 「はい、お線香」
 「ありがとうございます」
 杏花音さんからお線香を受け取って、お墓の前に置く。目を閉じ、手を合わせて、心の中で蒼に話しかけた。
 
蒼、遅くなってごめんね。やっと、笑えるようになったよ。看護師にもなれた。たまに無性に蒼に会いたくなるけど、それは出来ないからね。でね、蒼との約束は果たせそうだから、私のお願いも聞いてくれる?

・・・蒼が、明日も心から笑えますように。

そう心の中で願って、目を開けた。
「美波ちゃん、お腹空かない?」
「良かったら、この後ご飯食べに行かない?」
「はい!もちろんです!」
二人の問いかけに、私はとびきりの笑顔で答えた。やるべき事はやった。また、ここに来よう。

蒼との日々を忘れないために。そして、ずっと笑って過ごすために。
  

                                     【完】