明日もきみが心から笑えますように

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 新学期、私たちは三年生になった。でも、電車の中にも、教室にも、蒼の姿はなかった。なぜ、蒼がいないのか。それは午後のホームルームで先生から伝えられた。
 「今連絡があって、山本蒼だが・・・・入院することになった」
 その瞬間、皆がざわめく。・・・力が抜けた気がした。本当なんだ。蒼は病気で、もうすぐ死んでしまうかも知れない。そう思うと、涙がこみ上げてきそうだった。
 ホームルームが終わると、莉子と美桜、相原くんが私の席に来た。
 「お見舞い、ほんとに行かなくていいの?」
 「うん。蒼が来ないでって言ったから・・・」
 「でも、一回くらい・・・」
 「きっと、蒼も来てほしいんじゃないかな」
 「そんなこと言っても・・・」
 「いつ、死んじゃうのかも分からないんでしょ?ね、行った方がいい」
 三人には、蒼と別れたこと、蒼が病気で、いつ死んじゃうかも分からないということを話した。三人とも、心配してこう言ってくれている。でも、それは蒼にとって迷惑になってしまうかもしれない。
すると、莉子が私の腕を掴んで立ち上がった。
 
 「行くよ。ほらリュック」
 そう言って莉子はどんどん進んでいく。もしかして蒼のとこに行くつもりなの?
 「ちょ、莉子!蒼のところには行けない」
 「・・・まだそんなこと言ってんの?いいの?もう会えなくて」
 「それは・・・」
 言い淀んでいるうちに莉子はまた歩き始める。そうなったら莉子はなにを言っても止まってくれなくて、とうとう蒼が入院している病院に来てしまった。
 「ほら、行こう」
 「で、でも・・・」
 「じゃあ、見るだけでもいいから。ね」
 受付の人に蒼がいる病室を聞いて、エレベーターで向かった。
蒼の名前が記されている病室の中をのぞくと、ベッドに横たわっている蒼がいた。腕に、何本のも管が付けられている。蒼は寂しそうな顔で、窓の外を見ていた。つらそうだった。どんな気持ちなんだろう。ここに、ずっといなきゃいけないのは。たまに苦しそうに胸を押さえる蒼を見ていると、いたたまれなくて、莉子に「帰ろう」と声をかけて、病院を出た。