明日もきみが心から笑えますように

 8
 私が倒れた日から一ヶ月が過ぎた。今私たちは来週の文化祭に向けて準備をしている。
 「美波、手伝おうか?」
 「お願い、蒼」
 私が倒れた翌日、蒼にお礼を言ったら、『気にしないで、こっちがお礼言いたいくらいだから』と、意味不明なことを言われた。
 そして私は、本当に蒼のことが好きになってしまったみたいだ。そのことを莉子と美桜に言うと、キャーキャーはやし立てられて恥ずかしかった。それに、蒼の好きな人のことが気にかかると話したら、『それは大丈夫』と二人とも断言していた。どこからその自信が湧いてくるのかは分からなかったけれどそんなにきっぱり言われると本当のように聞こえてきて不思議だ。
 「楽しみだなぁ、文化祭。美波は誰と一緒にまわるの?」
 「莉子は相原くんとまわるって言ってたし、美桜は実行委員だから忙しそうだし。今年は一人
かなぁ。ちょっと残念だけど」
 「美波も一人?実は俺もなんだよ。翔のやつ、彼女とまわるって言ってよぉ。あの薄情者め」
 「あ、神崎くん、彼女できたんだ」
 蒼も一人なんだ。・・・一緒にまわりたいな。でも断られたら・・・。あ、蒼も好きな子誘うかも知れないし。うん、ここは諦めよう。 
 「美波。もし良かったらさ、文化祭一緒にまわんない?あ、その、お互い一人だしさ。い、嫌
なら断っても良いから」
 あ、蒼の方から誘ってくれた?でも私なんかで・・・ううん、誘ってくれたんだから自信持たなきゃ。そうしないと蒼まで否定することになる。
 「もちろん。私も同じこと思ってた」
 「ほんとに?あー百倍楽しみになった」
 何でそんなさらっと言うんだろう。勘違いしちゃうよ。もしかしてまだ私のこと・・・って。・・・罪を重ねないで、これ以上。心臓が持たない。・・・なんて言っても分かってくれないと思うけど。
 そんな事を考えていると、ほんとに蒼のこと好きなんだなって実感する。今まで恋愛とは一番遠かった私が誰かを好きになるなんて、思ってもみなかった。時々あの日を思い出して、なんでふっちゃったんだろうと考えるとと、永遠に後悔してしまいそうで恋って怖いなと思う。
 その日の放課後、莉子と美桜がどうしても言いたいことがあると半ば強引に莉子の家に連れてこられた。
 「・・・こうして集まるのは夏祭りのまえ以来だね」
 「そういえばそうだね。あ、匠海今日お母さんに会ってって。お母さん、会いたくてしょうがないって言ってたから」
 いつも疑問なんだけど、何で相原くんってこういう女子の話の場に来るんだろう。いくら莉子から言われたとしても普通は断るよね。普通は。
 「二人とも、聞きたいことって何?」
 「あ、そうだった。文化祭、誘った?山本」
 「うん。ていうか蒼が誘ってくれたけど・・・」
 「そ、そうか。蒼くんもだもんね」
 「蒼もって?」
 「あ、それは何でもない。で、一番重要なのは・・・」
 「蒼に、文化祭で告っちゃえってこと。文化祭ってさ、そういう雰囲気あるじゃん?私と匠海もそうだったし」
 「こ、告白?でも蒼のことふったのに今更好きって言っても・・・」
 「じゃあさ、美波はこのままでいいの?このまま、片想いのままでいいの?」
 「それは・・・」
 「そうだよ、美波。もしふられても、私たちがいるから。ね、私がふられたときも心強かったから。ま、大丈夫だと思うけどね」
 まだ、告白とかは無理だよ・・・。心の準備も出来てないし、もしふられて蒼と話せなくなったら・・・。私は美桜みたいに強くないからとてもじゃないけど話しかけるなんて出来ない。
 「美波、当たって砕けろだよ」
 「莉子、それじゃあ佐倉さんがふられること前提みたいじゃないか」
 「あ、そうか。砕けはしないか。じゃあ何て言うんだ?」
 「うーん、当たって・・・抱きしめられろ、じゃない?」
 「あ、それいい!!」
 何を話してるのこの人たち・・・。「当たって抱きしめられろ」なんて言葉ないし。
 「美波、絶対絶対大丈夫だから、頑張って」
 「頑張れ、美波」
 「え?まだ告るなんて言ってない」
 「あ、そうだった?でもね、美波に告られたら山本、嬉しいと思うよ?だってこんな可愛い美
波からの告白なんだもん」
 「私は別に可愛くない・・・」
 「私たちからしたら可愛いの。自信持って!」
 「・・・考えとく」
 もし、万が一、そういう雰囲気になったら頑張ろう。蒼といられる時間はまだたくさんある。別にそんなに急がなくてもいい。
・・・そんな風に、私は思っていた。