「松山さん、松山さん。」


暖かいものが私の頬をなでた。



「ん…?」


眠い目を擦りながら起き上がる。


「こんにちは、松山さん。」


ふわふわしたものが半袖パジャマから出た腕をかすめた。


だんだんと視界と意識がはっきりしてくる。



声の主をはっきり捉えたとき、私は思わず声を上げた。


「いっ稲荷くん!??!!?」

「こんにちは。」


私の驚き顔に微笑んで返すのは、

稲荷くんによく似た人物だった。


いや、人なのか?

その人にはキツネのような尻尾がたくさん、
そして浴衣のような和服を着ていた。


そう、妖狐のような姿だった。


「え?え?なんで?稲荷、くん、だよね??」

「…まあそうだね。この尻尾とかはちょっと訳ありなんだけど。」


え?稲荷くん??
訳ありの尻尾?


まさか…まさかまさか…


「稲荷くん…妖怪…??」

「えぇ!?違うよ!」



いや、じゃあその尻尾はなに!?

耳だって生えてるし!!


耳4つあるし!!!



「いや、聞いて??この姿は、ちょっと変化してるだけで。もともとは…ホラ!」


そう言ってボフンと音を立てて煙に包まれたかと思うと、
目の前には黒いシャツにジーンズを履いた背の高い人間の稲荷くんがいた。


「えええ……。」

私は驚きすぎてジリジリと後ろへ下がる。


稲荷くんって…人間ならざるものだったの…?



「こっちがホントの姿。俺、稲荷飛鳥はちゃんと人間だよ。
そっちの稲荷飛鳥も人間でしょ?」

「え、あ、そっすね……」


たしかに私の知る稲荷くんは人間ですけど…。
じゃああなた誰なのよ!!

てか、さっき俺、稲荷飛鳥デスヨ発言してたね!!?


「えっと…なんで俺が君の夢に出てるかっていうと…「ちょ〜っと待って!!」


勝手に話を進めようとした稲荷飛鳥(仮)にタンマをかける。


「あなた、誰?」


「え、稲荷飛鳥。」


「でも私の知ってる稲荷くんは、中学生だよ?」


「あぁ、俺は20歳稲荷飛鳥。」


「あ、ふーん。そっかぁ。」


へえ…育った稲荷くんってことね…って



「えええええええええええええええええええ!?!??!?!?!?!!??!!」