「どうしたんだ。そんな暗い顔をして」

ミーアを見つめるタッカー。

「……」

ミーアは小さく溜息をつきながら、タッカーに話す。

「タッカーは、魔槍の呪いの話を知っている?」

「ああ…今王宮の方では騒ぎになっているらしいね」

噂を聞いた時、タッカーは憤りさえ感じたものだ。

確かに精魂込めて鍛えた武具には、強い力が宿る。

それは名剣、伝説の武具などと呼ばれ、何十年、何百年と騎士や剣士達の間で語り継がれる。

それはその武具を鍛えた鍛冶師には名誉であり、誉れ高き事であった。

しかし。

この国で噂になっている魔槍は、一国をも滅ぼす呪われた武具であり、人死にさえも引き起こすと言う。

タッカーはそれが我慢ならなかった。

確かに武器だ。

人の命を奪う事もあるだろう。

だがそこに存在するだけで尊い命を奪うような武具などありはしない。

それは槍を鍛えた鍛冶師に対する冒涜であり、槍そのものに対する冒涜であると考えていた。

「だから呪いなんてものはない。怖がる事はないよ」

その言葉に。

「タッカーは前向きなのね…そうやって私の不安を払拭してくれる」

ミーアは優しげに微笑んだ。