時は、まだ戦乱真っ只中。

女神国が、建国したばかりの頃の事。

「よしっ…と」

一人の男が、城下町の一角にある店の前に立ち、背伸びをした。

短い髪を風になびかせるこの男、名をタッカーという。

とある国よりこの女神国に移り住んできた、平凡な一般市民である。

いつまでも終わらない戦乱に半ば追われるような形で、強い力を持つこの国に庇護を求めてきた。

力ある者が幅を利かせるこの時代、力無き者には暮らしにくい世の中であった。

故に強き国に頼り、住む場所を転々とする。

それは然程珍しい事ではなかった。

…引っ越しの荷物をまとめ、タッカーは店の看板を見上げた。

『鍛冶屋・タッカー』

なんともありふれた名前の店だ。

そう、彼は前住んでいた場所でも鍛冶屋を営んでいた。