この地には、かつて大きな戦があったという。

はじまりは誰も知らない。

気がつけば国と国、騎士と騎士とが滅ぼしあい、多くの民が焼け出され、大切な人を失い、悲しみの底に沈んだ。




やがてその戦乱も終わりを告げる。

この地に平和をもたらしたのは、ヴァルキリー…戦乙女の化身と呼ばれる一人の少女と、その少女の傍らに立つ真紅の外套の騎士だった。




だが、この物語はそのような英雄譚ではない。





ここに描かれるのは、平凡な市井の人々。

女神国に店を構える鍛冶屋の男と、その彼に寄り添う若い娘のお話…。