15階に昇りつめたエレベーターが開くのと同時に、離された唇。


艶めかしいどこか意地悪な瞳で、新海がアタシを見つめた。


「どう? ちょっとは、救われた?」


そんな新海の言葉で、止まっていた思考が、一気に動き出す。


アタシは両手で新海を突き飛ばし、エレベーターを降りると、そのまま階段で14階まで駆け下りた。


「ただいま」も言わずに玄関を開け、自室へと入ったアタシは……


その扉に寄りかかる様にして、背中でゆっくりドアを閉めた。


扉に体を預けたまま、スルスルとその場にへたり込む。


そしてまだ新海の温もりが残る唇に、指でそっと触れてみた。


ジンと体の奥が疼いて、頬が熱い事に気付く。


気だるさがまとわりついて、熱り出す体に、感じたのは、不覚にも……


……微熱?