37℃のグラビティ

「少しだけ部屋の電気消していい?」


何を思ったのか新海が訊いて、それに戸惑いながらも頷くと、テーブルの上にあったリモコンで、新海が部屋のライトを落した。


突然の暗闇に、目がまだ慣れない中、アタシの耳元で、新海が囁く。


「少しだけ……肩、貸して?」


答える前に、新海はアタシの口元に、その唇を近づけた。


思わず顔を背けてしまったアタシの肩に、軽く預けられた新海の額。


瞬間、心臓が肩に移動して、そこに熱を持つ。


新海と触れている右腕にまで伝わり出した熱はやがて、ぬくもりという心地よさに変わった。


あまりに近すぎる新海の顔を振り返る事も出来ず、アタシはどうする事も出来ないまま、音もなく時間だけが流れて行く。


静寂の暗闇の中、声も立てずに泣く新海に、気付いても気付かないフリをするのが、今のアタシには精一杯で……


かける言葉なんてみつけられないまま、ただ黙って隣にいた。