37℃のグラビティ

「なんだ……バレバレ?」


新海は苦笑いをしながら力なく言った。


「どうせくだらないケンカでもして来て、アタシに愚痴りたかったとか?」


そんな事だったりしたら「いい迷惑だ!!」と、散々言ってやろうって思ってたのに……


「くだらないケンカだったら、よかったんだけどな」


まるで独り言みたいに言った新海の横顔には苦笑いすらなくて、とても嫌な予感がアタシの胸を過る。


「彼女と別れた」


「どうして!?」


アタシはまるで新海を責める様に、声を張り上げた。


「『別れた』ってより、振られたんだ……俺。それでどうしていいかわかんなくなって、北川呼び出したりして……何やってんだろうな」


新海の力ない乾いた様な苦笑いは、本当にらしくない。


あまりらしくなさすぎて、それが逆にとても痛々しく見えた。


今にも壊れてしまいそうな新海を、両手を伸ばして抱きしめたいと思うほど……そんなアタシもらしくない。だから……


「ひとりになりたくない時くらい誰にだってあるよ」


新海を抱きしめるなんて事、出来ない代わりに、そう言った。