行き先を告げる事もなく走り出したタクシーに、アタシは怪訝な顔つきで、隣に座る新海に訊いた。


「どこ行くの?」


「俺んち」


思いもよらない答えに、思わず一瞬、言葉に詰まる。


なんでアタシが、こんな時間に呼び出されて、新海の家に行かなきゃならないわけ!? まったくもって、意味わかんない。


そんな困惑しきった顔のアタシに、新海が言葉を付け足した。


「親父は、今日いないから」


補足された言葉に、アタシはもっと困惑する。


「あとでちゃんと説明するから……」


そう言うと、いつにない新海の真剣な眼差しはアタシから逸らされ、どこか陰りのある横顔が瞳に映り、それ以上何も訊く事が出来なかった。