いつもと明らかに様子が違う新海を放っておく事が出来なかったアタシは、新海との電話を切ると、急いで出掛ける支度を始めた。


今、東京駅にいるらしい新海は、タクシーでアタシの家の近くまで来ると言い、支度を済ませたアタシはその場所へと急いだ。


約束の場所に辿り着いても、そこに新海の姿はない。


呼吸を整えながら吐き出す息が、白く宙に溶けていく。


キョロキョロと辺りを見回すアタシのもとに、一台のタクシーがゆっくりと止まり、開いたドア越しに新海が言った。


「乗って」


「え?」


「いいから乗って」


新海に言われるがまま、アタシは戸惑いながらもタクシーに乗り込んだ。