そして辿り着いた一階。


「開」のボタンを押したアタシの横をすり抜けて行く新海の背中に、思わず声をかけた。


「誕生日……おめでとう」


もちろんシカトは覚悟済み。


なのに……


エントランスを歩いていた新海は、足を止めてアタシに振り返った。


でもその顔は、無表情。


「わざわざどうも」


新海は棒読みの様なアクセントで言い、冷たい眼差しのまま、口端だけをあげた。


「メリークリスマス。よいお年を」


イベント言葉を並べて、一切抑揚のない口調で言う。


そしてまた歩き出そうとした新海の背中に叫んだ。


「新海くん! アタシっ……」


自分でも何を言おうとしているのか、何を言いたいのかもわからないまま……


頭で考えるより先に言葉がこぼれ、足を止めた新海が振り返る。