たくさんの好きをキミに

「遠藤さん！」

悠里くんの声が後ろの方から聞こえた。

振り返ると悠里くんがこちらに向かって走ってくるではないか。


「…っ！！？な、なん…来ないでー！！」

顔を真っ赤にして悠里くんから必死に逃げる。

だが運動部に所属している男子高校生に帰宅部の私が勝てるはずがなく、あっという間に追いつかれ、がしっと腕を掴まれた。

掴まれた衝撃で引っ張られるかのように足を滑らせ、尻もちをつく。


「わーっ！！ごめん、遠藤さん！」

悠里くんは「大丈夫！？」と慌てながら私の前にしゃがみ込んだ。


「ぜえっ…はあ…悠里く…なんで…つい…て……」

息が上がって上手く呼吸ができない。
それに比べて悠里くんは全く息を切らしていない。

運動能力の差を見せつけられ、自分の体力がないということを思い知らされる。


「遠藤さん、そのチョコ俺のために作ってくれたんでしょ？なんで隠すの？」

悲しそうに眉を下げる悠里くんにゔっ…と罪悪感が募る。