「ぐえっ」

顔面を机にぶつけ、壁代わりに立てていた教科書がばさりと落下。


「秋穂、今楓馬くんを監視してるんだって」

「監視?え、怖…」

「ちょっと亜美さん?」


何余計な事仰ってるの?


「なんでもないから、楓馬には関係ないし。ってゆーか重いんだけど!」

彼の顎がつむじに刺さっていて結構痛い。
わりとマジで痛い。


「ん~」

楓馬は退く気配がなく、すんすんと髪を嗅ぎ始める。


「わーっ!?匂い嗅がないでー!!」

「いいじゃん。秋穂んちのシャンプーの匂い、俺好きだよ」

「っ…」

楓馬の手が私の髪に触れ、心臓がドキッと飛び跳ねる。


「楓馬~」

楓馬とよくつるんでいる男子が彼の名前を呼ぶ。


楓馬は「おー」と返事をし、

「そんじゃあね」

ぽんぽんっと私の頭を撫でて男子の輪の中へ入っていく。


「…相変わらず秋穂の前では甘えたね~」

ニヤニヤしながらそう言う亜美。


「…秋穂顔真っ赤だけど、大丈夫?」

「大丈夫じゃない…」


好きな人に後ろから抱き着かれ、髪を触られた。
(あと嗅がれた…)


このままだと心臓が持たない。