いちゃもんをつければ奴は困ったように眉を潜めた。

「あのなぁ…栗原が私の名前はお前じゃないって言ったんだろ?それにわざわざ合わせたんだよ、言わせんな」

ほんのりと顔を赤らめた奴を見てついこちらまで赤くなる。

「…あ、あんたの名前は?」

気を逸らすためにとっさに思い付いた話題。奴は一瞬首を傾げてから納得したように頷いた。

「そういや、転校生のお前だけしか自己紹介してなかったな。俺は、兵藤敦(ひょうどう あつし)」

真っ直ぐで曇りなき瞳にとらえられてつい目を逸らす。

無理だ。そう、とっさに思った。奴…兵藤も、家によく来るあいつも私には眩しすぎる。