ふぅーと息を吐いてから、ここに来るまでの苦労を思い出していた。
まず、母は身内の私が言うのはなんだが美人だ。
そのせいでいろんな異性から好機の視線を浴びせられる。
私の男嫌いは、ここのせいで悪化したんだと今更ながら思う。
そして、いつもの母のおっちょこちょいが炸裂。
20代の男性にナンパされてついていかれそうになるわ、飛行機の座席は違うとこに座りかけるわ、最後のフェリーに至っては、間違って違うチケットを買うわ…。
もう二度とこんな母と二人っきりの大移動はごめんだ。
心臓が持たない…。
私がそんなこと考えていることを水知らず、母は私の前で楽しそうに鼻歌を歌う。
ま、そういうところが憎めないんだけどね…
「ほら、紅愛。さっさとお母さん家に行くわよ~」
「はいはい」