――美奈!美奈!美奈ぁ!

切羽詰まった男の人の声。

ジクジクと鈍い痛みが、腕に、足に、頬に、頭に、お腹に、心に、蘇った。

視界は霞がかり、意識も朦朧としている。

辺りは人が出す雑音でざわめき、ゆっくりと寝れそうもない。 

ふふ、あの人があんなに慌ててる。

珍しい。

思わず笑みを零すと、更にざわつきが増した。

……私って、意外に影響力、ある?

なんて、自惚れたこと思える程、私は余裕があるから。

だから、そんな顔しないで?

そんな苦しそうに、笑顔を曲げないで。

涙なんか、落とさないで。 

そんなの、性に合ってないよ?

笑ってよ。

涙なんか、乾かして。

自然に、目を細めて、唇を緩くカーブさせて。

周りを、照らしてよ。

私は、大丈夫だから――。

真奈、大好きだよ。

ごめんね、お母さんがいないのは大変だと思う。

でもお母さん、限界、きちゃった。

本当に、ごめんね。

そして、可愛い私の妹。

大好き、だよ。

いつも気にかけてくれて、姉の私よりしっかりしてくれて。

良いお婿さん、見つけてね。

――これ、全部言えてるのかな?

伝えきれてなかったら、ごめんね。

恐らく最期と思われる力を振り絞り、喉を震わせ、口を動かした。

お願いだから私の為に泣かないで。

  




……あの人をよろしくね。






最後にもう一度笑える余裕を見せてから、瞼を下ろし、意識を手放した。