「散々その名前は使った癖に、美奈さんに暴力をふるうようになったそうですね。それで、多くの生徒さんに危害を加えては隠蔽し、加えては隠蔽しを繰り返して」

俺は、もう無意識のうちに走り出していた。

どういうことだ。

垂れ流れる汗の数だけ、動揺が生まれる。

どうして、美奈のことを知っている。

とうして、美奈が死んだことを知っている。

どうして、俺が婿養子だということを知っている。

どうして、どうして……!?

俺は、動かない足を夢中で動かした。

何かの視線にぞわり、と鳥肌がたつと、花奈の顔が浮かんだ。

口が頬まで裂け、鋭い牙を剥き、目は吊り上がり、瞳孔は黄緑という、化け物のような顔だった。