僕は真っ暗な世界で目を閉じていた。体は温かい水に包まれている。でも不思議と息ができて、全然苦しくない。むしろ心地よかった。

どこからか、誰かの歌声が聴こえてくる。優しくて綺麗な歌声だ。とっても幸せ……。

リオン、エリカ、メルキュール、カズ、シャルロット、そして父さんや母さんと過ごした日々が頭の中を巡る。思い出すたびに、起きていた頃は不安と恐怖しかなかった。いつ裏切られるかわからないから、信じられない気持ちでいっぱいだった。でも今は、とても思い出が温かくて愛しい。

そうだ。これが本当の僕だ。みんなを信じて、何気ない日々を愛しく思って、小説執筆と同じくらいみんなをかけがえのないものだと思っていて……。どうして、あんな悪夢だけでみんなを信じることができなかったんだろう。

歌が止み、声が聞こえてくる。オズワルドさんの嘲笑うような声、そして必死に戦って僕を守ろうとするみんなの声だ。僕のためにみんなは……。