ノワールが眠ったのを見て、メルキュールはホッとする。次に目を覚ました時、ノワールはいつも通りのノワールになっているはずだ。
「先生は操られてあんな風になっていたんですね?」
エリカが心配げに訊ね、メルキュールは「うん。でももう大丈夫」と微笑む。かすかにノワールから絶望の魔法を感じたのだ。ノワール自らの意思で死のうとしていたわけではない。そのことが、メルキュールにとって一番の安心だった。
「ノワールまでも操って、どこまでも腐った奴だな」
カズが舌打ちをし、リオンも怒りに体を震わせている。そんな中、メルキュールは近くの建物を見つめた。そこから気配を感じる。
「そんなところで見てないで姿を見せたらどうですか?オズワルドさん」
メルキュールの言葉に、リオンたちは一斉に警戒して武器を手にする。すると楽しそうに笑いながらオズワルドが建物の陰から姿を現した。
「バレたか。まあ、なかなか楽しかったぞ?そいつが死んだらもっと面白かったんだけだな」


