「ノワールさん、自分が何かおかしいと思わないんですか?」

取り乱す僕を見て、シャルロットが凛とした声で訊ねる。僕は「知らない!」と怒鳴り、掴まれていない方の腕を噛もうとした。それをメルキュールに素早く阻止される。

「メルキュール、離して!」

「ノワール、君、オズワルドさんに魔法をかけられているよ。精神を不安定にさせて死に追いやる魔法」

メルキュールはそう言った後、杖を僕に向ける。魔法を解くには少しの間眠ることが必要らしい。でも、パニック状態の僕には何もわからない。

「ドルミーレ!」

メルキュールに魔法をかけられた刹那、僕は眠くなって目の前が暗闇に包まれていく。怖い、また悪夢を見たらどうしよう、眠るのが怖い……。

そんな僕の心や声に気付いたのか、メルキュールが僕の手に強く握ってくれる。

「大丈夫だよ。みんな、ノワールの味方だから」

メルキュールの言葉を聞いた後、僕の意識は完全に夢の世界に入った。